アメリカのトランプ大統領が、「一部移民受け入れ停止の大統領令」に署名をし、合わせて「経済活動が再開された時に、失業しているアメリカ人がまず職に就けるようにするためのものだ」というコメントを出している。
彼のこうした発言などは以前からさまざま物議を醸しているが、こういった発言が表に出て、かつ「アメリカ市民」を他の市民と分ける境界を明確に作るような行為を表ざたで行っているのであるから、アメリカ社会の中ではこういった人種差別というのは、裏でかなりひどいことになっていると推測もされることだろう。
もちろんトランプ大統領の場合は、政治的な戦略もあってのことだと思うが、大きな責任がある人間がこういった行為をすると、やはりそれに習うものも出てくることは想像に難くない。
果たしてその裏での状況はどのようなところか?昨年、埼玉・西川口で行われたSKIPシティ国際Dシネマ映画祭で上映された映画『陰謀のデンマーク』を思い出す。
『SONS OF DENMARK』という原題は、その名の通り「デンマークの息子」と名乗る保守派裏組織の存在をめぐって、さまざまな陰謀が交差する社会派サスペンスドラマだ。
アメリカで50~60年代に起きたアフリカ系アメリカ人公民権運動の結果、1990年代の社会主義崩壊も手伝って、男女差別など含めこうした差別的な認識、人々の意識は大きく変わったと思っていた。
しかし、どうもよくよく見るとそういった認識がどこかでくすぶっているらしい、トランプ大統領の言動からはそんなことを感じられるのだ。
確かに人間には、どうしてもそういう思いを持たなければならない宿命があるのかもしれない、自分は他人より勝っている、常に勝ち続けていなければならない、他は排除しなければ、と。
意識の中にはなくとも無意識にそういった方向に進む思考回路のルートがあるのだろう。それが他人を押さえつける悪しき方向にうまく持っていく必要が、人が生きていく中で避けられない課題としてあるのだろう。
こうした意識を感じさせる作品はあまたあるが、今回はちょっと方向を変えて「格闘技」という観点で取り上げてみたい。中国~香港のある格闘家の生涯を描いた『イップ・マン』シリーズだ。
若き日には日本軍に弾圧され、香港に移り住めばそこはイギリスの占領下であったりと、不遇の時代が長く続いたイップ・マン。
中国では彼の物語がテレビドラマ含めていろいろな作品が作られているが、最も有名なのはやはり名優ドニー・イェン主演のシリーズ作品だろう。この春に完結編となる作品公開が予定されているが、特に一作目の『イップ・マン -序章』、二作目の『イップ・マン -葉問』にこうしたエピソードが描かれている。
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これらの作品は、実際には作られた国の視点が入ってしまうため、どうしても偏った視点を感じてしまいなかなか共感できないという人もいるかもしれない。
その意味ではさまざまな視点で類似したケースの作品を見ることを、公平な視点を自身が持つということに向けてお勧めする。
たとえば『イップ・マン -葉問』は、人によっては『ロッキー4 炎の友情』を想起する人もいるのではないだろうか。格闘技を通して二人の武闘家が対立、その裏で国と国の対立が存在する。
そして、いずれの作品も結末には、勝者がその対立の無常さを訴えるという形となっている。
両作品を並べて見ると、さまざまなことを考えかつ答えが出ないというジレンマに陥るかもしれない。しかしその「考える」という意識をもつこと自体が大事なことといえるだろう。
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