『モンスターズ/地球外生命体』「共存」の本当の怖さを想起させるような物語

(C) Vertigo Slate 2010

今回のコロナ・ウィルス騒動に対し京大の山中伸弥教授は、この騒動は当面収まることを期待するより、コロナ・ウィルスとの「共存」を進言されている。  

コロナ・ウィルスとの戦いは、まだウィルス自体への決定打も見えないため、この時代を生き延びるには最もな意見であろう。

 この場合共存というのがどんな意味であるかを考えると、最低限の生活レベルを維持しながら「感染を徹底的に避ける」ということに尽きるだろう。

 ただ、この「共存」、コロナウィルスとの闘いで実は一番障害になるのは、意外にも人間同士の関係にあることを認識しておくべきだろう。


 そんなことを改めて考えさせてくれるのが、今回紹介する『モンスターズ/地球外生命体』だ。

 物語は近未来、地球に飛来したエイリアン生命体により危険地帯として隔離されたメキシコ。一人のカメラマンがお得意様の金持ちから依頼され、南米の令嬢を北米に連れて帰るという物語だ。 


作品はかなりの低予算で作られたにもかかわらず秀逸な出来と高く評価されている。確かにショットはすべて手持ちカメラで撮影されたようで度のシーンも若干のブレが見えるが、BGMを入れずとも変にPOV的にせず、かつ的確な構図をつなぎ合わせて、高いレベルの映像づくりを実現している。 

そして本題だが、物語の骨組みとなる設定には非常に近年迫りくる危機を感じさせられるところがある。

物語の設定では、登場するエイリアンは巨大で人類に大きな危害を及ぼすものとして存在しているが、登場する危険地帯の人間からは、「実はおとなしく、軍隊が登場すると暴れだす」というのだ。 

つまりは触らず居場所を作ってやれば、十分に共存ができるということをにおわせる。ところがここで大きな騒ぎになるのは、アメリカからくる軍隊がわざわざここで争いを起こすタイミングだという。

 物語り中では危険地帯を通り抜けようとした一つの家族がこのエイリアンの被害を被り死に追いやられるシーンがあるが、つまりは危険地帯を避けなければこうはならなかった。

危険である場所は、さらに危険になるということだ。 そして極めつけは、南米から北米への渡航。危険地帯を避け海路で進もうとするなら、海運業者は法外な値段を吹っかけてくる。

一方で金さえ払えば、正式な通関手続きすら一声でパスしてしまう。 この物語が、エイリアンの特撮を控えめにしている理由は、物語を見ればよくわかる。つまり地球人はエイリアンを恐れているつもりで、実は人間同士を恐れているのだ。 

 一部の地域をのぞいて国内の非常事態宣言が解除され、都心では一時法外な値段で売られて中国製のマスクが値崩れしてきたと聞く。コンビニやスーパーの買いだめもいまはないようだ。

が、決してコロナ・ウィルスの脅威はなくなっていない。また感染拡大が広がれば、こういったところで足元を見る人間も出てくることだろう。

警戒が緩まった現在、日本で爆買いをする中国人が軒並み発生していると聞くが、こんな事態で金もうけを考えるという人間の恐ろしさを感じるところだ。

一方でアメリカは、とにかく今回の事態に関して中国を非難、攻撃している。本当の争いになることも、可能性としてはゼロではないかもしれない。

映画のラストで描かれたエピソードは、その人間の恐ろしさを改めて感じさせるものだ。映画は現実から遠い世界を描いているという意見もあるが、遠くに見えて近いことを描いているようでもある。 

自分は病気に殺されるのだろうか?あるいは人間に殺されるのだろうか?不安な明日にそんな情景が見えた。そうならないことを、祈るばかりの毎日だ。

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